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ご相談を頂く中で多いのは「全部を塗り直すと大変だから、部分的な修理で済ませたい」というお話です。 左の写真のお宅もそうでした。道路側の端が剥落し危険だから、出来るだけ簡単に修理したい。というご要望です。 屋根に登り調査の結果、剥落した部分だけでなく上段の部分も明らかに剥落が近く、下段の部分は比較的安定していました。 ここで大事なのは周囲の環境です。剥落の恐れがあったとしても、周辺に危険を及ぼさなければ、落ちてからでも良いという事になります。半年後に落ちるかもしれませんが、もしかするとギリギリでも10年落ちないかもしれない。「あと何年持ちますか?」良く聞かれますが、これは本当に難しいことです。 今回は剥落すると道路(通学路)に落ちる箇所でもあったので、危険な個所はやり直す事としました。 強固な個所は残しつつ、危険な個所から修理を続ける。一度に大きな費用というのも負担になるので、小さくこまめにメンテナンスをするのも一つの手法かもしれません。 古い漆喰をめくり、健全な中塗り面まで露出させます。中塗り事剥落している箇所はファイバーネットや金具を用いて、補強しながら中塗りをします。 中塗り後は養生期間を必要とします。 土で中塗りを行うか、セメント(モルタル)で行うかによって、必要な期間は異なりますが、おおよそ10日間〜2週間の乾燥養生期間は必要になります。 養生期間を終えると、砂漆喰で下塗りを行い続けて上塗り漆喰にて仕上げます。 場所によっては防藻効果のある撥水材を塗布することで汚れの抑止も可能です。 今回の修理費用は120,000円です。作業は3日で所要日数は2週間でした。 |
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昔も今も土蔵を建てるという事は、とても大変な事です。家を建てるくらいの費用が掛かるなかで、蔵を建てることには意味がありました。今のように火事や災害に家が強くない時代に、先祖からの大切なものを守り伝える為に、土蔵というのは大変重要なものでありました。 |
一方部分的な修理ではなく、全体的に化粧直 しを行い、役目を終えようとしていた土蔵を 生まれ変わらせる事も出来ます。土蔵は構造 的な問題を抱えていな ければ、表面を保護する塗り替えを行う事で、 またこれからも長く大切に守り続けていく事 が可能です。 その為にはまず土蔵自体が、構造的な問題を 抱えていないかを調べなくてはなりません。 |
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構造的な問題とは地盤沈下などで土蔵が傾い ていたり、地震などの影響で大きなクラック が沢山入り、壁の芯である土壁が崩壊してい る状態、また雨漏りを放置し、土壁や柱など が朽ちてしまっている状態です。 詳細には調べないと分かりませんが、土蔵に おける構造的な問題は止まらず進行を続ける 事が多いので、複雑な処置を要します。。 そのような状態で表面の化粧直しを行っても すぐに痛みの箇所に問題が起きてきます。 このような構造的問題を抱えていると、その 修復・復原工事にはかなりの費用を要する事 になります。家が1件建つ位の費用の覚悟も 必要になります。まずは現地調査をさせて頂 いて化粧直しが必要がどうかを確認します。 |
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構造的な問題がない事を確認してから化粧直 しへと進めます。 傷んだ箇所だけでなく全体的に化粧直しを行 うという事は今のところ健全な部分もやり替 えるという事ですので、また末永く守り続け ていける仕事が求められます。 部分的な修理の場合は、基本的に修理した箇 所以外のところが先に傷みます。「その時は またその時に考えます。」というのが部分的 な修理で、全体を直すということは、またこ れから先も末永く、この土蔵を継承していき たいというお施主様の決意に他なりません。 新築とは違い、昔の古い土壁の上から塗り重 ねる作業になるので、どうしても剥離のリス クは高くなります。適宜必要に応じて下地の 補強や新しい素材や工法を駆使して修復をし ます。基本的に上塗りの漆喰を塗り替えるだ けで済ませる事は少なく、中塗り補強を行い ます。 施工における手段の選択も「より長持ちする にはどうするべきか?」が最重要課題となり ます。これはとても難しい旅なのです。とい うのも、一番強い方法は解体して一からやり 直す事だからです。そうではなく最低限のコ ストで最大コストと同じ強度を探す旅です。 「そんなもん無いわ」と言ってしまえば、そ こで技術の進歩は止まる。昔は無かった工具 や素材が沢山あります。それらを上手く取り 入れながら、伝えられてきた技術と融合して いくのが、現代を生きる職人の役割です。 それらを見て受け継ぎ、また次の世代が工夫 を重ねる。それが左官の伝統です。その為に 大切なのが、まずは昔の技術をきちんと習得 して、それらを分析して客観的に理解する事。 新しい工夫はそれからです。 若手の育成において基礎を大切にするのと同 じ事でもあります。 伝統を守り大切されるお施主様の為に、これ からも技術の向上に努めて参ります。 |
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